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つくりものがたり

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2013年 07月 30日

沈みゆく船


Facebookに書いた投稿を転載します。


鎌田慧 公式ブログより……

<最近の新聞記事から 働く場の変質>

まず、最初に7月14日付、朝日新聞電子版から、このところ話題になっている「追い出し部屋」の記事。

 「出向という名の「追い出し部屋」 退職拒めば過酷な業務」の見出しで、マンション分譲大手の「大京」を例に、その非人間的な「追い出し部屋の実態」を書いている。
 「大京」は国際金融資本のハゲタカファンドの傘下に入り、リーマンショックで経営危機になって以降、大幅な人員削減を行ってきた。
 社員に営業代行会社のセレブリックスなどにいきなり出向させ、給与は「大京」が支払い、営業代行会社はタダ同然で、自社の電話営業の仕事などをさせる。夕方6時まで、わずかな昼食時間を除いて、ずっと電話をかけさせ続ける。

  
長机に出向社員ら約200人が肩がくっつくほどびっしりと座らされた。「お世話になっております。○○と申します」から始まる電話営業の「台本」が渡され、電話を1日200件かけるノルマが課された。(引用)


 売る商品はたえずかわる。英会話の教材から「マグロ1匹」まで。何でもありの世界だ。長い年月をかけてマンション分譲の営業のキャリアを積み、大京の利潤を生みだしてきた原点であるはずの社員をこうした過酷な業務で絞め上げていく。

  
電話での働きかけがぎこちないと、一回り以上も若いセレブリックスの社員に1時間もなじられる。
  キャリアを積み重ねてきた中堅社員たちが会社の都合でばっさり切られ、退職を拒めば過酷な業務を強いられて使い捨てられる。これまでの人生が否定され、これからの暮らしも見えない。
   「俺たち奴隷かよ」。帰路、何度も線路に飛び込もうと思った。(引用)


 これは、なにも「大京」だけの話ではない。朝日新聞は「追い出し部屋」を設けている企業として、「リコー」「パナソニック(子会社)」「東芝」「ソニー」「NEC(子会社)」「日立製作所」etc.といった日本の代表的な大企業の名を挙げている。

……


働いても働いてもいっこうに暮らしが楽にならない個人事業主はいつもため息まじりにいったいどうしてこんな世の中になったんだろうと考える。でもそれは僕ら日本人が戦後50年以上もかけて、保証、安心、安定、快適を求めて、その他の価値をほとんど無視してアクセル全開でつっぱしってきた結果だから自業自得。社会通念を鵜呑みにし、レールから外れることを恐れ、多数と違うものを差別し、出る釘を打ち、ほとんどみんな出世のみを目標にしてきた「成果」なのだ。だからほとんどのひとが自分がいま属している場所しかいる場所がない。自分の中に自分の価値、自分の世界を持っていない、そのためにそこで自分を否定されると極端に弱い。精神を病み、命を絶つこともある。

そういうありさまに脱力し無力感にとらわれるひとは選挙に行かず、なおいっそうそういう傾向を加速させようとする為政者のやりたい放題。企業・法人は資本主義社会の中で生き残ることのみを目指し、合法でさえあれば、ときには違法すれすれでもそのためには手段を選ばず、会社を動かす立場の人間はますます倫理観を失い、自己責任という社会通念を強いてくる。

かくして人間たちはバラバラ。一見華やかな都会も緑なす田舎ももはやそのじつは砂漠。それもこれもみんな僕らが望んだことなのだ。沈みゆく船。それを誰も止めることはできない。もし日本人の大多数がそれを自覚して方策を考えて、みんながバケツを持って侵入してくる水をかき出し続けたらもしかしたら浸水は止まるかもしれないが、日々のルーティンにあくせくしてるだけしか能のない僕らにはたぶんそんなことは無理だろう。としたら、どこかにあるかもしれない救命ボートを見つけて真っ先に自分がそこに乗り込もうとしている、ってことと同じこと。さて、子どもたちに希望は語れるか?


by kobo-tan | 2013-07-30 20:14 | 社会


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