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つくりものがたり

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2011年 08月 14日

素晴らしい人生

皆様、残暑お見舞い申し上げます。
いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

こちらはかねてより家族と約束の海行き夏休みを8月の初めに取り終わり、
その後は難物の変形キッチンの製作、取り付けと、
この酷暑の中、だらだらと流れ落ちる汗をぬぐいぬぐいしながら、
とにかく無事に納まってくれることだけ願いつつ、職務に勤しんでおります。

もちろん工場には冷房などありません。日中は32℃まで上がります。
それでも2階部分が直射熱をさえぎってくれるので、仲間の工場よりはいくらか涼しいようです。
夜おそくなってやっと30℃を下回るこの環境では、事務所のエアコンだけが唯一の救いです。
噴き出る汗と倦怠に耐えられなくなると、ドアの向こうに逃げ込んで、上がりきった体温を下げるのです。

現場はいまだ進行中ではかばかしい写真も撮れていないため、更新もままならず、残暑お見舞いをかねてのお便りと相成りました。
世の中相変わらずの不況です。
のどから手が出るほど欲しい入金も滞りがちだったり、見積りには失敗したり、工事スケジュールは遅れたり、
うまくいかないことだらけのうえに、追い打ちをかけるようなこの暑さ!

それでも、ね。人生はすばらしい。
生きているってすばらしい。

盲ろう(目も見えず耳も聞こえない)の方で、福島智という東大の教授がいらっしゃいます。
彼がNHKの「ようこそ先輩」の収録で、二日間、母校の神戸市の小学校で、6年生の子供たちと過ごしたことがあります。
そのとき、そのなかのひとりの少女が無謀にも彼にこう尋ねたんです。
「人生のなかで、いちばんよかったことは何ですか」

福島さんは、しばらく黙っていましたがこう答えました。
「いちばんよかったことは・・・・・、僕が生きていること。これはほんとうに奇跡的なこと。
 いまこの瞬間、僕と君は話してるよね。それは、生きてるから。
 生きていてよかったなと、それがいちばん」

どうやって話してるかって?福島さんは自分の声で話し、少女の言葉は、通訳の方が彼の指にモールス信号のように打ち続けているんです。
福島さんには少女の姿は見えず、少女の声も聞こえません。
想像してみてください。
彼は、いまこのときも、暗黒の宇宙のなかに、たったひとりでいます。


素晴らしい人生とはじめたのは、ここ数日車のなかでこの曲を聞きまくっていたからです。



いまから39年前、斎藤哲夫弱冠22歳。デビューアルバムのオープニング曲。
つきることないこの広大な世界です。

by kobo-tan | 2011-08-14 12:20 | ものがたり


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