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つくりものがたり

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2013年 05月 10日

家具は小さな建築



今週の火曜に鎌倉方面のお客さんのところ2件に現地調査に行って、それから図面描きと見積り、
ずっとパソコン画面や金物カタログなどを老眼鏡かけつつああでもないこうでもないと見つめ続けてやっと、
一件の方の図面と見積りなんとか仕上げていまゴーサイン待ち。今日はこれからこれもお待たせしている鎌倉のSさんの、
パーテーション家具の製作図面と見積り、ずっと座って頭と眼だけ働かせる仕事で夜中まで、もう頭は倦み気味だし寝不足で、
その状況を端的に表しているこのぐちゃぐちゃの机の上です。

家具は小さな建築_d0169209_11302240.jpg


お客さんと設計士さんの間で家具についての形と仕様がほぼまとまったうえで設計士さんが描いた元図があれば、
こちらはそれを咀嚼してスムーズに製作に移れる製作図面に直してゆくだけでいいのですが、今回の最初のお客さんは、
ひとりの現場監督さんが請け負って、お客さんの希望を聴きながら、分離発注した大工さんや電気屋さんなど各業者さんに伝え、
全体をまとめていくというまったくシステマチックでない手作り風の、だから余計に大変なリフォームのお宅です。
お客さんにしてみれば、のびのびと自分のアイデアや希望を主張できるのでとても楽しそう。でも家族の意見がまとまらなければ、
あああれはやっぱりこうします、とか、いやこっちに変えてください、とか、なかなか先に進まなかったり、あれここはこう言ったはずなのに…とか、
うまくいかない弊害も出てくる。とくに今回はお母さんと息子さん二人がそれぞれにアイデアとこだわりのある人で、
その二人の希望をうまく掬って、こちらもアイデアを出し、不満の残らないようにいちばんいい落とし所に着地するように持っていく。
そして最後は、ああやっぱり家具屋さんに頼んでよかった、と思ってもらうような仕事をしなければならない。


自分の仕事だから贔屓目に言うのじゃないですが、家具ってホントにいろんなものがあって、材料もいろいろ、作り方もいろいろ、
家具に使う金物だって、電話帳みたいなカタログが各社何冊もありますからね。ほかの業者さんにくらべたら仕事の幅の広さでは一番のような気がするんです。
家具は小さな建築。自分で、ウチはコレ専門です、みたいに限定するならまだしも、さまざまな要求に最大限こたえていこうと思ったら、
つねに工夫と、それを支える経験が要る。お客さんの要求に沿いながら、自分の創意も加えて、考えられるいちばんいいものをつくっていく。


家具は小さな建築_d0169209_12132532.jpg



家具は小さな建築_d0169209_12133922.jpg



上の図面が、台所とリビングの間に置く間仕切りカウンター。
台所側からのオープンスペースには各ゴミ箱を収納。リビング・ダイニング側には炊飯ジャーとトースターを下の収納部に格納して、
しかもスライドテーブルにして引き出して使いたい。でも使ってないときは扉を閉めて見えなくしたい。それでついこちらは、
じゃあ、ポケットドアにしちゃうって手もありますよなんて言っちゃった。垂直収納扉のことですが、
開いた扉が吊りもとに収納スペースにスーッとはいって邪魔にならない、というヤツです。
それで、図面をつくるときに、垂直収納扉の金物と、スライドテーブルの金物と、炊飯ジャー・トースターの大きさと、ゴミ箱スペースの広さと、
それぞれの制約をすべて読みとって呑み込んで、もっとも妥当な、製作可能な図面にするのにいちばんの時間と労力を費やしたというわけです。
これも言っとかなきゃ、と思いついたサジェスチョンはあとで手書きでいっぱい書きこんで、お客さんに図面をファックスしました。

ああまたこれ書きながら、これ密閉しないで、ウラに空気孔つけたほうがいいんじゃないか?なんて思いついた。
扉を閉めて、炊飯器を保温状態にする時もあるもんね、それは。


頭のいい人は、たぶんこんなの半日、いや2~3時間で終わらせてしまうんでしょうね。自分はとてもできない。
あ、あれはどうだったっけ?これはこっちにぶつかっちゃうんじゃないんだっけ? これじゃレールがはまんないじゃん、
描いちゃ気付き、描いちゃ思い出ししてもたもただらだら、一気に描き上げるということができません。人間の限界を感じる。

でもここで、自分は集中力ってものがない人間だ、という自己評価を下してしまうと、それは否定的なネガティブな判断だから、
へこむし、自信を失くしてっちゃう。自分は納得しないと先へ進めない人間なんだ、見積り出すにも、つくりはじめるにも、
込み入った家具はそれ相当の時間をかけて向き合わないと失敗するし、いいものはできない!とまあ偉そうに開き直って
結局は自己肯定してしまうもんだからいつまでたっても進歩がないんでしょうか?
自分に甘いのかな?
それはたしかにあるな。
なんか自分の言ったり書いたりしてること、すべて言い訳のような気がする時あるし。
けっこうダメなやつだしな。

がんばれ、おれ! なんて。 アハハ。


つまんないこと考えてないで、仕事しまーす!

by kobo-tan | 2013-05-10 13:23 | つぶやき


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