つくりものがたり

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2013年 05月 13日

枯葉剤の傷跡を見つめて、




先日、フェイスブック上にノンフィクション作家の鎌田慧さんのブログにリンクした投稿があり、その記事の内容に非常なショックを受けた。それは原田和明という方が書かれた「真相 日本の枯葉剤」という本の書評だったのだが、そこには、「三井染料(のちに三井東圧化学)が戦後、米軍がベトナムの森林に散布して、壊滅的な打撃を与えた、枯葉材を生産していた事実は知られている。」と書かれていたからだ。

枯葉剤は猛毒のダイオキシンを含み、その大量散布によって、多くの奇形児や障害児を生み、またそれはベトナム戦争が終わって40年近くが経つ今日でもなお続いている。それはその容器であるドラム缶に付けられた縞の色から「エージェント・オレンジ」と呼ばれた。ぼくはこのエージェント・オレンジはてっきりアメリカの軍需産業である化学会社でつくられていたとばかり思っていた。それはほんとうに、その一部であるかもしれないけれども、日本の化学会社で作られていたのだろうか。その本はいま注文中で、手に入ったらそのあたりを自分の目で確かめてみたいと思っている。

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枯葉剤について目を開かれたのは、2年前にNHKのETV特集で放送された「枯葉剤の傷痕を見つめて  アメリカ ベトナム 次世代からの問いかけ」という番組を見てからだ。この番組は、いま、ネット上で見ることができる。 このページにある画面をクリックすると見れる。(現在再生されないと書いてあるが、見れる)番組は1時間以上あるけれども、興味のある方はぜひ見ていただきたいと思う。

ぼくはこの番組を見た後、この中に出てくる映像作家、坂田雅子さんにこんなメールを書いた。 


坂田さま

ETV特集に、言葉にならないほどの感銘を受けました。
DVDにダビングして繰り返し見ています。
この問題は、ひとつ戦争のみに起因しているのではなく、
人間の弱さや、ずるさ、愚かさのすべてがかかわって、
当事者にとってより根深く耐えがたい問題になっている。
へザーさんたち障害を持って生まれてきた方々の苦しさ辛さは、
想像することさえできないくらいです。
世の多くの人たちは忘れたがっている一方で、彼ら彼女らは、
一生この問題に直面し続けなければならない。
この世界では、悲しみだけが真実だという思いが去りません。
へザーさん坂田さんと、ベトナムの方たちとの交流は、
この深い悲しみを共有されていて胸を打ちます。美しくさえありました。
でも最も美しかったのは、重い皮膚病を病んでいるその方が、
アメリカの被害者の方たちに対して、がんばってくださいといった言葉でした。

私事になりますが、わたしは熊本県の水俣市の出身で、
故郷水俣も、公害という深く大きな問題を半世紀以上もかかえてきました。
そしてこの枯葉剤が引き起こした問題が、水俣で起こったことと重なるところが多いと思いました。
差別ということもあります。
どちらも実に多くのことを考えさせるし、ひとがためされているのだと感じます。

坂田さんの生き方にも感銘を受けました。
へザーさんと坂田さんの出会いは、へザーさんにとっても、彼女の手紙が語っているように、
深い意味のあることだったろうと思います。
坂田さんたちの活動を、こちらは日々の生活に追われなにもできませんが、
こころから応援したいと思います。
障碍をもった方たちに少しでもよろこびが増えますように、願ってやみません。


これに、坂田さんからすぐに丁寧な返信をいただいた。


川上さま

「希望の種」奨学金へのご協力ありがとうございます。
まだ、小さな一歩を踏み出したばかりですが、
徐々に確実な歩みにしていきたいと思います。
活動の様子はホームページで紹介してまいります。これからもどうぞよろしくお願いします。
皆様の志がベトナムの子供たちに届くよう微力ながら努力してまいります。

ETV特集をこのように見てくださる方がいることに大変励まされます。
枯れ葉剤の問題は水俣、そしてその他のいろいろな問題と根を一にしていると思います.
その根源的なところを見据えていくよう努力したいと思っています。

今後ともどうぞよろしくお願いします。

坂田雅子



坂田さんは「希望の種奨学金」という基金を立ち上げ、ベトナムで障害に苦しむ子供たちを支援しておられる。
坂田さんの枯葉剤を追った2本目の作品「沈黙の春を生きて」は、昨年の文化庁優秀映画賞、文化映画ベストワンなど多くの賞を受賞した。坂田さんは、ご主人のグレッグさんを失くされてから枯葉剤について取材をはじめ、それを映像で発表するためにそれから映画製作を学ばれたという。このかたの志、生き方をぼくはこころから凄いと思っている。

by kobo-tan | 2013-05-13 03:19 | 社会 | Comments(4)
Commented by 原田和明 at 2013-05-26 23:33 x
拙著「真相 日本の枯葉剤」に関心をお寄せいただきありがとうございます。お読みいただいていかがでしたでしょうか?私も枯葉剤はアメリカの化学会社で作られていたとばかり思っていましたので、「枯葉剤国産化疑惑」に出会ったとき、大変驚きました。それで、当時の資料を足がかりに調査を重ね、状況証拠を積み上げていったのが本書です。
 なお、水俣のご出身とのこと。水俣病事件の背景に新たな仮説を投げかけたメルマガ「水俣秘密工場」も併せてお読みいただけたらと思います。

「水俣秘密工場」
http://melma.com/backnumber_90715_3098833/
Commented by kobo-tan at 2013-05-27 10:32
著者の方からのコメントでびっくりしました。コメントほんとうにありがとうございます。著書は、いま家具製作の仕事が忙しくなり、まだ出だしの「沖縄サリン事件」の章しか読めていないのですが、原田さんの詳しい取材で、その地に暮らす住民の方々をないがしろにして進む上層部の微妙なやりとりなど初めて知ることだらけで、目を開かされる思いです。
「水俣秘密工場」の1回目も今読ませていただき、続きが気になっているところです。枯葉剤も水俣もその罪の根深さは、それが一過性のものではなく人の一生を苦しめ続けるところにあり、それに反比例するように、加害の責任は多数の人間によって分散され薄められ忘れることさえできてしまうことだと思います。ぼくも公式発見から68年に廃液の製造工程を廃止するまでなぜ12年も毒が流され続けたのかをもっとみんな考えなければいかんだろうとずっと思っています。御本とメルマガの続きをよませていただき、あらためて感想を送らせていただきます。
Commented by 原田和明 at 2013-05-28 03:37 x
お忙しい中、さっそくのコメントありがとうございます。「枯葉剤の傷痕を見つめて」の日本版のような番組が週末に放送されましたが、ご覧になりましたか?
ETV特集「毒と命 ~カネミ油症 母と子の記録~」で再放送が6月1日(土)午前0時45分~(金曜深夜)にあります。
カネミ油症事件は今ではほとんど忘れ去られた感がありますが、PCBがダイオキシン供給源として枯葉剤と同等の性能(化学兵器の価値)を有するかどうかを確認する人体実験になった重大事件です。
番組は日本にも、ベトナム、アメリカと同じ「傷痕」に苦しむ親子が多数いることを教えてくれています。
ところで、「なぜ12年も毒が流され続けたのか」は私も子供の頃に思った素朴な疑問でした。その回答のひとつが「水俣秘密工場」です。同じ問題意識をもっていた人がおられたことを知り、とてもうれしいです。
Commented by kobo-tan at 2013-05-28 12:04
原田さん、返信ありがとうございます。
カネミ油症の番組は早速金曜に録画しておいて見たいと思います。いま「水俣秘密工場」第6回まで読ませていただきましたが、これはすごいことになって来たという思いです。やはり、アメリカがからんでいたのでしょうか。化学製品の細かいところもさすが専門の方らしく詳しいので凄い説得力だと思います。それに、あの、関係者の証言の数々! 命にたかが薬品を優先させた官僚の生の言葉が忘れることはできない。Nスぺの「戦後50年~チッソ従業員の証言」はぼくも放送時に見ましたが、これは戦争と同じだなと、その時つくづく思ったことを思い出します。メルマガ、また読ませていただいてからまた書きます。


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