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つくりものがたり

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2015年 02月 25日

高島野十郎の月




高島 野十郎(1890年〈明治23年〉8月6日 - 1975年〈昭和50年〉9月17日)は、生涯独身を通し、画壇とも関わらず、隠者のような人生を送った。

「もの」そのものに向き合い続けた画家。


彼の遺稿ノートにある言葉。

「生まれたときから散々に染め込まれた思想や習慣を洗ひ落とせば落とす程写実は深くなる。写実の遂及とは何もかも洗ひ落として生まれる前の裸になる事、その事である」


「蝋燭」と同様に、多く残した「月」の絵。それについての言葉。

月ではなく、闇を描きたかった。
闇を描くために月を描いた。
月は闇を覗くために空けた穴だ。



高島野十郎の月_d0169209_13232790.jpg


高島野十郎「満月」

# by kobo-tan | 2015-02-25 13:27 | つぶやき
2015年 02月 24日

高島野十郎の火






深津千鶴さんへの返信



深津さん、なんか自分の思いつきばかり書き送ってて深津さんをむしろ混乱させているんじゃないかと、そうでなければいいけどと思うんですけど、また少しこないだから思ってたことがあったので書いちゃいます。

ぼくの旧い友人に舞踏家の秀島実というひとがいて、彼と昔々絵の展示会かなんかに行ったときに彼が「風景画を描くやつの気が知れない」と言ったことがあるんですね。彼の真意は、抽象画というか、風景や人物を描いても、作者の、作者なりの「見かた」が入った、作者の感性と世界観によってデフォルメされた絵でないと意味がない、というようなことだったんだろうとぼくは理解したんですが、秀島さんも若い時だったんで、いまは違う感想を持ってるとは思うんですけど、なんか、ピカソ以降、写真でも撮れるような絵は意味がないみたいな風潮がたしかにあるような気もするのね。

でも、前田英樹さんの本の「在るものを愛すること」を読んでから、そういう見方は浅薄だったなと思うようになった。
たとえば、僕は絵のことはまったく素人ですけど、むかし高島野十郎という画家の展覧会にいったことがあって、彼は変わった画家で、自分の好む題材ばかり書くんですよ。たとえば、燃えている一本の「ろうそく」とか、夜の暗闇に浮かぶただの「月」とか。「ろうそく」のシリーズなんて、ほとんど構図も色合いも似たようなのがたくさんあるのね。深津さんにも、連作ありますけど、高島のは、ああ、いろいろと違うアプローチで描いてみたかったんだなぁ、という感想を持たされるより、このひと、なんでこればっかり描くんだろう、と、どうしても思ってしまうような描き方なんです。で、そう思うんだけど、次から次にそのたくさんのろうそくの絵を見ていくと、似たような絵なんだけど、もちろんまったく同じものはひとつとしてなくて、なんか異様な迫力として迫ってくるんです。するとね、やっぱりいろいろと考えてしまう。このろうそくの火は何なのだろう、画家はこの火の中に何を見たんだろう、同じような火をなぜ彼は描き続けなければならなかったんだろう…ろうそくの火自体はなんの変哲もなく、「すぐわかる」ものだけど、これらの疑問は「わからない」ものとしてずっと自分の中に残ります。そしてそのわからなさを「味わう」ような… アートの力ってそういうところにあるのかといまは思ったりしてます。




高島野十郎の火_d0169209_1455212.jpg


# by kobo-tan | 2015-02-24 15:02 | つぶやき
2015年 02月 23日

ガラス落とし込みの建具 ~ フラッシュの場合 




以前、無垢の框扉にガラス落とし込みをするやり方を載せましたが、今回は、ガラスが小さい場合に、フラッシュの建具でやるやりかた。
落とし込みの細工を内部につくりながら芯を組んでいって、ボンドつけてポリ合板をプレス接着するんですが、
あとで押し縁でガラスを固定するやり方よりも手間がかかるものの、でき上がりはガラス周りが表も裏もすっきりしてきれいです。


ガラス落とし込みの建具 ~ フラッシュの場合 _d0169209_18531254.jpg

真中に150×800mmのガラスがはまるドア。


ガラス落とし込みの建具 ~ フラッシュの場合 _d0169209_18591142.jpg

その形の芯を組む。
芯と芯の間には、紙芯(ハニカムコア)を敷き詰める。

ガラス落とし込みの建具 ~ フラッシュの場合 _d0169209_19341100.jpg

左右と下方はまっすぐのくせのな気無垢材に5.3mmほどの巾の溝を突いて三方の枠をつくる。


ガラス落とし込みの建具 ~ フラッシュの場合 _d0169209_1903265.jpg

上から5mmのガラスを落とせるように5.5mmのべニヤがちょうど入る空洞をつくる。
はさんだベニヤはそのままでプレス接着。


ガラス落とし込みの建具 ~ フラッシュの場合 _d0169209_1945589.jpg

ガラス落とし込みの建具 ~ フラッシュの場合 _d0169209_1964847.jpg

白ポリをプレスして内側の細い淵には慎重に白テープを貼り調える。


ガラス落とし込みの建具 ~ フラッシュの場合 _d0169209_1971746.jpg

建具製作のキモ。レバーハンドル・空錠の取り付け。慎重に墨して加工。失敗したら一からやり直し。

# by kobo-tan | 2015-02-23 19:11 | 製作過程
2015年 02月 22日

アメリカンチェリーの食器棚



アメリカンチェリーの食器棚_d0169209_2147823.jpg

センターに抽斗、両サイドオープンの食器棚。
抽斗前板、正面の見付はすべてアメリカンチェリーの無垢材。
この食器棚のキモはふたつ。


アメリカンチェリーの食器棚_d0169209_21494515.jpg
アメリカンチェリーの食器棚_d0169209_21495216.jpg

ひとつめ。
天板にじかに貼られた1mm厚のステンレス板。
天板の三方にチェリーの枠をあらかじめ廻しておいて、その上にステンレス板を、ほんの手触り程度チェリーが勝つような、
ほぼピッタリの寸法で、貼る。
これは神経を使う。


アメリカンチェリーの食器棚_d0169209_21555180.jpg
アメリカンチェリーの食器棚_d0169209_21555846.jpg


ふたつめ。
右オープンの最下部にオープン状のチェリーの抽斗。
これはそっくりそのまま見えてくるので、抽斗内箱の側板・前板・向う板は無垢材、底板はチェリー突き板でまとめた。
収めたときにすきまの目地が3mmになるように、側板は少し張り出させる。
抽斗レールは、ソフトクローズの、横から見えないタイプのもの。これはブルム。



アメリカンチェリーの食器棚_d0169209_2229199.jpg
アメリカンチェリーの食器棚_d0169209_22291747.jpg

施工後の写真

# by kobo-tan | 2015-02-22 22:08 | 製作例
2015年 02月 21日

ミラー枠の作り方




前回載せたパイン家具の時に一緒に作った、洗面台上のミラー枠の作り方。

タモ無垢材の板目を長手・妻手(短い方をこう呼びます)プラスαの寸法で切り出し、4本の材料を作る。
留め加工…端を45度にカット。


ミラー枠の作り方_d0169209_13101192.jpg

その前に…今回のように材の巾がある程度ある時は留め定規の加工精度を確認しておく。
この小正方形がぴったり合うまでテープなどはさみつつ微調整。


ミラー枠の作り方_d0169209_13141661.jpg
ミラー枠の作り方_d0169209_13142334.jpg

留め定規に延長棒をつけてセット。


ミラー枠の作り方_d0169209_13164210.jpg

縦横の枠材の長さを0.1mmの単位で合わせるために切っ先までさくっと入るストッパーをセット。


ミラー枠の作り方_d0169209_13193290.jpg

接続にラメロ(ビスケットジョイント)を入れてボンド接着。
角の養生を柔らかめの木で作りトラックの荷台で使うゴムロープで巻いてゆく。


ミラー枠の作り方_d0169209_13215534.jpg

ぐるぐるピシッと三重くらい巻いてとめる。


ミラー枠の作り方_d0169209_13234831.jpg

5mmミラーと3mmミラーマット分の8mmあけて押し縁取付。


ミラー枠の作り方_d0169209_1324401.jpg

完成形。


ミラー枠の作り方_d0169209_1325181.jpg

留め先はこんな感じ。
額は留め先くらいしか見られるとこないので、ここはぴったり合ってないとまずい。
合わないところがあったら、サンドペーパーで擦ってでも何しても、合わせるしかない。
合ってないものは渡せないすからね。額のキモですから。

(経年変化の木の収縮で時間がたつと中のほうが空いてくるのはいたしかたない。
ファミレスとかにある額はだいたいそうなってますよね。)

ミラー枠の作り方_d0169209_13253977.jpg

断面はこんなふうになってます。

額なんか作る時の参考にしてくれるとうれしいです。

# by kobo-tan | 2015-02-21 13:38 | 製作過程